早く上達するにはどうすればいいの?


 まず、いちばん大切なのは「続ける」ことです。先輩の話がよくわからなくても、試合でなかなか勝てなくても、まだ始めて間もないんだから当然です。ディベートは、全体像が見えるまでに少し時間がかかるゲームなので、最初のうちはどこから手をつけていいのかわからず、困ってしまうことがあるかもしれません。でも、あれこれ試行錯誤していれば、あるとき突然、霧が晴れたように全体像が浮かび上がってきます。何かあってもあせらずに、気を大きく持って、じっくりと取り組んでください。

 その上で、思いつく点を2つあげてみます。

 1つは、自分の頭できちんと考える、ということ。先輩に教えられたとおりの試合をしているだけでは、いつまでたっても上達しません。先輩だって対戦相手だって、所詮はぺーぺーの一学生です。もっともらしく見えても、必ずどこかでおかしな考え方をしています。この議論はどこがいけなかったのか、なぜこんなシナリオが成り立つのか、常に自分の頭で考え、わからないところは徹底的に疑ってかかる姿勢を持っていれば、だんだんと「質の良い議論を見分ける力」というものも身に付いてきます。

 また、原稿は、他人が作った原稿を使い回すだけでなく、必ず自分でも作るようにしましょう。もちろん、全ての原稿を自分で作っていると負担が大きすぎるので、効率よく分担することは大切です。ただ、人が作った議論を借りているだけでは、その議論のどこが強みで、どういう場面にどう使えば効果的なのか、といった深い理解があまりできません。出来上がった議論の本当の強みは、結局作った本人にしか分からないのです。さらに、自分で原稿を作らないと、1つ1つの小さなアイディアをまとまった大きなシナリオとして昇華させる、というディベートで最も楽しい部分の訓練ができません。特に、予選レベルの試合だと、最初の立論の原稿だけで勝敗の50%以上が決まってしまいますが、自分で原稿を作れないと、相手の反論にあわせて自分たちのシナリオを調節し、立論のどこを残して逃げ切るのか、という柔軟なコントロールを、全くできなくなってしまいます。

 だまされたと思って、一度「あの先輩がいってるから正しいんだろう」と丸呑みしていた原稿を、資料は一から探さなくても構いませんから、全部バラバラにして組み直してみましょう。意外に証明が弱いところがたくさん見えてきたり、必ず何か発見があるはずです。特にセオリー系の原稿の場合には、普段何気なく読んでいた決まり文句を自分で最初から書いてみることで、自然と「なんでここはこうなってるんだろう」と考えざるをえなくなり、理解が格段に深まります。実は、もっともらしい顔をして、とんでもない議論をまわしているディベーターがたくさんいる、ということがわかってくるはずです。

 もう1つは、前の章で少し触れたように、「とにかく試合経験をたくさん積む」ということです。ディベートの理論の本を読むことももちろん大切ですが、それを自分で消化し、使いこなせるようになるためには、やはり実戦で経験を積むしかありません。

 他大学の友人でも、チームメイトでも、先輩と1対1でも、なんだって構いません。とにかく、相手が見つかれば練習試合をやりましょう。ジャッジも自分たちでやってみると、なお良いです。さらに時間と環境が許すなら、片っ端から大会に出るのが一番の近道です。

 練習試合で、他大学に原稿を出し惜しみするのも、できればやめた方がいいでしょう。どうせどこで出しても対策は作られてしまうのですから、それなら初めから相手のさらに1歩先を行くくらいのつもりで全力でぶつかった方が、練習試合としても実のあるものになるはずです(こう思いながらも、やっぱり現役時代はそんな心の余裕なんてありませんでしたけど。でも、本来はこうあるべきです)。

 とにかく、まずは続けましょう。2年間がんばって続ければ、必ずそれなりの結果はついてくるはずです。

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