大学のディベート


 ここからは、大学のディベートを見ていくことにしましょう。

 現在、大学のディベートには、大きく分けて以下の3つの流れがあります。 このうち、Academic Debate と Parliamentary Debate は英語で行います。また、Academic Debateと日本語ディベートは、使用する言語が違うだけで、基本的にルールは全く同じです。Parliamentary Debateだけは、独自のルールを採用しています。Academic系とParliamentaryの違いを主要な点だけ簡単に説明しておくと、 となります。

 もともと、ディベートは欧米で生まれたものだったという経緯もあり、1950年代に本格的にアメリカからAcademic Debateが輸入されて以降、1990年代初頭までは、大学で「ディベート」といえば英語のAcademic Debateしかない、という状況が続いていました。このため、現在日本各地で行われているほとんどのディベート(ここまで見てきた中高生のディベートを含む)は、Academic Debateそのものか、何らかの形でこれを簡略化したものとなっています。また、最近では各年代向けに多くのコミュニティが存在しますが、こうした経緯からたいていの場合、設立・運営に何らかの形でAcademic Debate経験者が関わっています。

 このスタイルは論理を追求するのには極めて優れていたのですが、一方で問題もなかったわけではありませんでした。ロジック至上主義に走りすぎるあまり、現実離れした議論を論理で固めて押し通したり、専門的な話を一般人には聞き取れないような猛烈なスピードで話したり(もちろんやっていたのは一部の人間ですが)、といった行為が批判されることも多く、90年代になり、こうした問題を改善すべく、いくつかの新しい流れが出てきました。

 そのうちの1つが、イギリスで生まれたParliamentary Debateです。同じ英語圏から生まれた形式でも、こちらは議論の内容(matter)だけでなく、その伝え方(manner)も重視しよう、というもので、1990年代前半から、ICUやKUELといった団体が主に関東地区周辺で普及活動を始め、近年急成長しています。

 また、1990年代後半に入ると、「なんで日本人なのに英語でディベートやらなきゃいけないんだ」というもっともな考えから、JDAやJCDF(現CoDA)といった団体が、新たに学生・一般向けに日本語ディベートの普及活動を始めています。

 以下の章では、この3つのスタイルについて、高校との比較も交えながら、もう少し掘り下げていくことにしましょう。

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